・ヨガ哲学のサマディーとは何?
・ヨガ八支則(アシュタンガ)の実践について知りたい
・サマディーを体験したい!
・サマディーって幸せになれるの?
ヨガ哲学を少し学んだことがある人なら聞いたことがある「サマディー」という言葉。実態がつかみにくく、どんな状態がサマディーなのか全く理解できない!本当になった人いるの?と疑問も多いと思います。
今回はヨガ八支則(アシュタンガ)の最終目標「サマディー」の正体について、一体どんな状態なのか?何を実践すればサマディーを体験できるのかについて、わかりやすく解説したいと思います。
【ヨガ哲学】八支則の最終段階サマディーとは
サマディーとは
サマディーは、「三昧・悟り・超意識」と日本語に訳されます。言葉だけだと理解が難しいのですが、要約すれば「幸せで穏やかな状態」がずっと続くことです。
悟り・超意識=ヨガが定義する幸せの状態
三昧=そればっかりが続いている状態
サマディーはヨガ八支則最終段階
ヨガ八支則(アシュタンガ)では、「サマディー」とは下記の通り最終段階に位置しています。
つまり、「サマディーと言われる幸せ(=八支則の幸せ)になる為には、下記表の①ヤマ②ニヤマから⑦瞑想までを行いましょう!」とヨガ八支則で教えてくれています。
【ヨガ哲学】八支則サマディーの正体
ヨガのサマディー(幸せの定義)「心の作用の死滅」とは?
ヨガの八支則(アシュタンガ)における幸せの定義(=サマディー)とは何かを考えてみましょう。普段思い描かれる幸せは、こんなイメージでしょうか?
・家族で仲良く暮らす事
・お金がたくさんあること
・社会的な地位が高い事
・好きな人とずっと一緒にいられること
・旅行に沢山いける事
・贅沢な料理を毎日食べられること
・プール付きの大きな家に住むこと
もちろん幸せの定義は十人十色で、多様な考え方があります。
しかしヨガが教えてくれる幸せの定義、そしてヨガをする最終的な目標とは何でしょうか?それはヨガ哲学を伝える古典「ヨガスートラ」(4世紀頃パタンジャリが書いた瞑想の経典)の1ページ目に答えが書いてあります。
YOGAS CHITTA VRITTY NIRODHAH
ヨガとは心の作用の死滅である
この意味が理解できれば、もうヨガを行う必要も学ぶ必要もないとまで書かれてあります。
「心の作用の死滅」は感情を失くすこと??
心の死滅?
無になること?
ヨガ哲学を学ぼうと開いた本の1ページ目に「心の死滅」と書いてあったら、もう本読むのをやめようかな・・・難解な本だわ・・・と諦めたくなります。ここではもっとわかりやすくご説明します。
たまに、「感情を失くすこと」「無になる」と理解されている方もいますがそれは間違いです。人間である以上、感情を失くすことはできません。料理をみて美味しそうだとか、サウナで暑いなと感じることを失くすなんて生きている以上無理です。それは、自分の感情を押し殺して生きることとなり、ヨガ哲学の「アヒムサ」の教えに反することになります。
「心の作用の死滅」の正体
「無になる」「感情を失くすこと」ではないのなら、ヨガ哲学の「心の作用の死滅」とは一体何でしょうか?
それは、思い込みや常識・感情などを捨て、まっさらな心の状態で物事を見ることです。
もう少しわかりやすく説明するために例を見てみましょう。
①同じ人を見て印象が異なるのはなぜ?
同じ人を見ているのに人によって印象が変わるのは、見る側の経験の違いです。生きてきた環境や経験が違い、その経験から生じた思い込みや常識が異なるからです。同じ人を見ても、以前自分にひどい言葉を発した人と似ていると、きっとこの人もひどい人なのかもしれない…と感じる事があります。実際にはもっと潜在意識のレベルで判断しているとも言われていますが、その経験の違いが抱く印象の違いに繋がっています。そしてこの違いこそ、個々の人による「心の作用」の結果です。
②倒産したら本当に不幸?
「倒産」=「不幸・可哀そう・大変そう」というのも実は思い込みです。以前に倒産して家も手放したTVを見たことがあるとか、知り合いの会社が倒産して大変そうだった等、過去の自分の経験を元に判断をしているだけです。もちろん実際に大変な事もありますが、中には倒産をきっかけに、起業して今では大成功を収めているという人や、自分の新たな才能を発見した人もいます。また、倒産を経験した本人も自分を「とても不幸」って思っていたのに、成功したら「倒産して逆に良かった」と考えが変わる場合があります。それは「倒産」という事実に「感情」を織り込んで、さらに良い悪いを判断しているのです。これも同様に「心の作用」の結果と言えます。
このように、気が付かない間につい自分が持っている思い込みや常識で人は出来事や物事を判断しがちです。これが「心の作用」の正体です。この心の作用を死滅させる、つまり色眼鏡で人や物事を見ないことが心の作用の死滅の本来の意味です。
サマディーの正体
「心の作用の死滅」の正体がわかれば、サマディーの理解はもうできます。
悟り・超意識=ヨガが定義する幸せの状態=「心の作用の死滅」
三昧=そればっかりが続いている状態
ヨガ哲学の「心の作用の死滅」とは、思い込みや常識を手放して(=死滅させる)、その影響を全く受けない心を持つことをいいます。さらにその心の状態がずっと続けられている事(=サマディ)が幸せな状態で居られると教えてくれています。
サマディーの状態は本当に幸せなのか?
ここまで、サマディーについて詳しくご案内しましたがいかがですか?。でもきっとここで疑問が出ます。
本当に「サマディー」になれたら幸せなの?
はい。ここでは私なりの解釈をご紹介します。
もし幸せの定義が初めにお話した「お金が沢山あること」「好きな人と一緒にいる」「社会的地位が高いこと」「大きな家に住むこと」であったとします。手に入れた時には「幸せ」と感じるかもしれませんが、しばらくすると今度はそれらは全て失う可能性に怯えることとなります。また、良い悪いの判断や評価は常に変化を伴うものです。例えば、土地の価値なども買った時はとても高い評価を得ていたけれど、暴落するなんてことはよくあります。
誰かの反応やお金など数えられるもので幸せを判断し、その都度一喜一憂することは、とても辛く到底幸せとは言えないと思います。
ヨガでは、そのような不確実で流動的なものを幸せの判断材料にすることを辞め、コントロールできる自分自身に焦点を当てることを教えてくれているのです。
何かが起きて不安や怒り・舞い上がるような喜びの感情が溢れてきても、その感情に流され溺れて、感情にまかせた行動をその都度取っていたら、他人にも自分に対しても信頼を失っていきます。
つまり、自分の意志で手や足を動かすことが出来るのと同様に、心も自分でコントロールできる力を身に着けることがヨガを実践する目的だと思います。
【ヨガ哲学】サマディーを体験・実践する唯一の方法
サマディーとは生き方
では実際にサマディーを体験するには何をすればいいのでしょうか?
お気づきの方も多いでしょうが、今すぐサマディーを体験する方法はありません。それはこのサマディーとは「生き方」そのものだからです。「生き方」は、何かをしたからと言ってすぐに変えられるものではありません。自分が毎日選択している行い1つ1つ全てが、自分の生き方を形成しているからです。
サマディーが体験できる唯一の方法
つまり、サマディーを体験し実践できる唯一の方法は、日々の暮らしを振り返りその過ごし方や小さな選択1つ1つに心を向ける訓練をすることなのです。その訓練こそがヨガ哲学の八支則の実践なのです。
ここでもう一度、ヨガ哲学の八支則を振り返ってみましょう。
- ①・②ヤマ・ニヤマ(10個の教え)
日常生活を整える
暴力を振るわない・清潔にする・学ぶことなど10個の教えから、自身の日常生活を振り返り・気づき見直すこと - ③アーサナ(座法)
身体を整える
身体の不調や痛みなどを、色々なポーズをすることで気付き見直すこと - ④プラーナヤーマ(調気法・呼吸法)
呼吸を整える
呼吸法を学び、自身の呼吸の状態から自分の状態に気付き、呼吸をコントロールできるようにすること - ⑤プラティヤハーラ(感覚の統制)
感覚・感情を整える
外側からの感覚(暑い・痛いetc)などに心が動かないように、自身の感情をコントロールできるようにすること - ⑥ダーラナ(集中・精神統一)
意識を整える
1つのものに集中できるように、自分で自分の意識をコントロールできるようにすること - ⑦ディヤーナ(瞑想)
自分を整える
身体・呼吸・感覚・感情をコントロールできるようになることで、外からの影響を受けずに本来の自分で居られるようになること - ⑧サマディー
いかがですか?
つまり、ヨガ八支則(アシュタンガ)は、自分を少し離れたところから観察し、体や心に主導権を握らせないよう自分自身が心と体をコントロールできるようにする訓練です。この訓練を日常生活に落とし込み毎日毎日繰り返し行うことが、サマディーを体験できるたった1つの方法なのです。
サマディー(幸せ)を体験したいのであれば、ヨガ八支則の実践を日々意識をしましょう。
これがサマディーの体験
ヨガ八支則(アシュタンガ)が実践でき、サマディーを体験している人は、「私はサマディーを体験した」とはきっと言いません。それは、人は無意識に行っていることに対して、「~している」とは言わないからです。
先ほどご案内した①~⑦の実践は全て自分が意識的に行っている状態です。身体・呼吸・感覚・意識を自分の意志でコントロールしようとしているのです。それに対し、サマディーとは①~⑦を意識せずとも無意識にできている状態を言います。それがサマディー=「超意識」「三昧」だからです。
わかりやすく日常を例にとってみました。
【例】応援している野球チームが負けた時
①の状態の人がヨガ哲学を学び、②や③の状態へ変化したのであれば、それは八支則(アシュガンタ)の実践が出来ていると言えます。
「ヨガ哲学を学び八支則(アシュタンガ)を実践を続けていたら、いつの間にか自分が変わっていた」これこそがサマディーの体験と解釈しています。
是非ヨガ哲学を学び、より穏やかで豊かな人生を送っていただけたら嬉しいです。
ヨガ哲学「サマディー」をもっと知りたい方におすすめ!ヨガ哲学の本
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